呼吸器内科とは
呼吸に関係する器官でみられる症状や病気について、診察・検査・治療を行います。
診察時の様子や患者様の訴えなどから何らかの呼吸器疾患(ぜんそく、肺炎、COPD、肺がん 等)が疑われる場合、胸部X線撮影(肺の状態を確認)、血液検査(アレルギーの有無等を調べる)、呼吸機能検査を行うなどして、診断をつけていきます。
また睡眠時無呼吸症候群が疑われる方には、睡眠中の呼吸状態、いびきの程度、SpO2(酸素飽和度)、脈拍などを測定できる簡易検査装置を貸し出します。検査時は、センサを装着し、眠りにつくだけで容易に測定できるようになります。この結果、詳細な検査が必要となれば、医療機関で一泊しての入院検査を行います。
呼吸器内科でよくみられる症状
- 咳が長引いている(2週間以上)
- 痰が絡む咳が続いている
- 痰に血が混じっている
- すぐに息切れしてしまう
- 煙やホコリを吸い込むと激しく咳込んでしまう
- 喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューの呼吸音)が聞こえる
- いびきが大きいと指摘された
- 昼間でも強い眠気に襲われる など
呼吸器内科で取り扱う主な疾患
- 風邪
- インフルエンザ
- 気管支炎
- ぜんそく(気管支ぜんそく)
- 肺炎
- 肺結核
- COPD(慢性閉塞性肺疾患)
- 肺気胸
- 咽頭炎・扁桃炎
- 気管支拡張症 など
代表的な循環器疾患
気管支喘息
その名の通り気管支に炎症が起きている状態で、炎症による腫れで気道が狭くなり、少しの刺激でも敏感になりやすくなっています。これによって、咳や痰、息苦しいなどの症状がみられます。さらに呼吸時に「ゼーゼー、ヒューヒュー」といった呼吸音(喘鳴)なども現れる喘息発作が起きるようになります。
発症の原因に関しては、アレルゲン(アレルギー反応を引き起こす原因物質:ハウスダスト、花粉、食物 等)をはじめ、風邪、喫煙、運動、大気汚染、寒暖差が激しい気候などによって引き起こされるとおわれています。
検査について
問診を行ったうえで、確定診断や重症度を判定するための検査として、血液検査(アレルギー体質の有無、アレルゲン等を調べる)、呼吸機能検査(気道の狭窄の程度について、スパイロメータを使用して調べる)、気道可逆性テスト(気管支拡張薬を使用し、実際に気道が広がっているか等を確認する)、呼気NO検査(呼気中に含まれる一酸化窒素を測定することで気道の炎症状態が確認できる)などを行います。
治療について
治療は薬物療法が中心ですが、喘息を引き起こす要因でもある気道の炎症を抑える治療と喘息発作を抑える治療があります。
炎症を抑える治療では、吸入ステロイド薬や長時間作用型β2刺激薬(LABA)、ロイコトリエン拮抗薬などが用いられます。一方、喘息発作を抑える治療として使用されるのは、短時間作用型β2刺激薬(SABA)をはじめ、ステロイド薬の点滴、内服薬などです。
またアレルゲンによるぜんそくであれば、原因物質を遠ざける環境づくりも必要となります。
肺気腫・COPD
主に長期に渡るタバコの煙等の影響によって、肺に慢性的な炎症が起きるようになります(慢性気管支炎)。これによって、気管支が狭くなり、さらに肺胞壁が破壊され、肺胞腔が広がっていくことで肺がスカスカになってしまいます。これを肺気腫と言います。
このような状態になると、動作時に息苦しい、咳や痰が慢性的に続くといったことが起こるほか、病状が進行すると安静時でも息が切れるようになります。このような症状を訴えているとCOPD(慢性閉塞性肺疾患)と診断されます。治療せずに放置が続いてしまうと、肺炎や肺がんなどの病気を発症させるリスクも高くなります。
検査について
患者様の症状からCOPDが疑われると診断をつけるための検査として、スパイロメトリーによる呼吸機能検査(思いっきり吸って、思いっきり吐く)や胸部X線検査などを行います。
治療について
喫煙をされている場合は禁煙が必須です。またこれ以上は呼吸機能を悪化させないための治療法として、気管支拡張薬(β2刺激薬、抗コリン薬 等)やステロイド薬による吸入をしていきます。また薬物療法以外にも呼吸器リハビリテーションを行うなどして、身体活動性をできるだけ維持できるようにします。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠中に呼吸が10秒以上、停止あるいは低呼吸状態を度々繰り返すこと(睡眠中1時間あたりで5回以上、7時間の睡眠で30回以上)で、十分な睡眠を得ることができず、身体に様々な影響がみられている状態を睡眠時無呼吸症候群(SAS)と言います。
無呼吸状態になる原因は主に2つあります。ひとつは、睡眠中に気道が閉塞することで発症する閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)です。閉塞の原因としては、肥満(首回りに脂肪がつく)、生まれつき顎が小さい(小顎症)、扁桃肥大、舌の巨大化、軟口蓋低位などが挙げられます。もうひとつは、中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)と呼ばれるものです。これは主に脳から呼吸指令が発せられないことで起きるタイプです。この場合、気道が閉塞されているわけではないので、いびきが出ることはありません。主に慢性心不全、脳血管障害の患者様にみられることが多いです。なお日本では、全SAS患者様の9割程度の方がOSAとなっています。
よくある症状として、いびき(OSAの患者様のみ)、中途覚醒(眠っている途中で目が覚める)、日中に強い眠気に見舞われる、起床時の頭痛、疲労感、集中力の低下などです。またSASの状態を放置し続けると、高血圧、糖尿病、脳血管障害、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)などの発症リスクも上昇するため注意が必要です。
検査について
診察の結果、SASの診断をつけるための検査が必要となれば、睡眠時の呼吸状態や心拍数、酸素飽和度(SpO2)等を測定できる携帯型の検査装置を貸し出しいたします。就寝時に指先や鼻にセンサを装着して一晩眠りについていただくことで検査が可能です。この結果から、さらなる検査が必要となれば、専門の医療機関で一泊入院しての検査が行われます。この場合も呼吸状態や酸素飽和度等を調べるほか、SASと診断された場合の重症度も確認することができます。
ちなみに検査の結果、AHI(睡眠1時間あたりの無呼吸あるいは低呼吸状態の平均回数)の数値が5以上となればSASと診断されます。なお重症度の分類に関してですが、5~15未満が軽症、15以上30未満が中等症、30以上が重症と判定されます。
治療について
軽症の患者様に関しては、オリジナルのマウスピースを作成し、睡眠時に装着することで下顎を前方へ数㎜ずらすことで呼吸を確保する方法のほか、肥満による気道閉塞が原因であれば減量をするなど生活習慣の改善なども行っていきます。
中等症以上の患者様であれば、CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)が選択されます。これは圧の加わった空気を送り込む装置を用いるもので、就寝前に鼻マスクを装着します。これによって、睡眠中も気道が閉塞されることがなくなるので、鼻呼吸による睡眠が可能となるほか、いびきは軽減されるようになります。治療期間中は、一定の間隔を空けて通院してください。その際に使用感などを医師に報告するなどします。
なお中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)の患者様では、原因疾患の治療が優先されますが、医師が必要と判断すればCPAP療法を行うこともあります。